電子決裁とは?決裁システム化のメリットと事例

働き方改革や新型コロナウイルスによるテレワークの推進で、業務の電子化に取り組んでいる企業も多いことでしょう。なかでも「脱はんこ化」の流れで、電子決裁を導入する企業が増えています。そこでこの記事では、電子決裁の概要や具体的な導入メリットをご紹介します。

電子決裁とは

「電子決裁」とは、従来のような紙の申請書を用いる代わりに、電子文書を用いて決裁処理をおこなうことです。電子決裁を導入すれば、経費精算や休暇申請、稟議などの書類の申請、承認・決裁、保管までをすべてオンライン上でおこなえます。パソコンやスマートフォンから決裁ができるようになるため、コストの削減につながるほか、時間や場所に囚われない働き方ができます。

また電子決裁は、決裁のスピードアップにも貢献します。大企業では、決裁を通すまでに1ヵ月かかるなんてこともざらにあるでしょう。その理由に、書類での申請では紛失が起きやすく、だれの手元にあるか見えづらいことが挙げられます。しかし電子決裁なら、オンライン上で決裁状況が一目で見えるため、これらの心配がありません。

電子決裁移行加速化方針とは

近年、電子決裁が普及している理由のひとつに、政府が推進する「電子決裁移行加速化方針」があります。電子決裁移行加速化方針とは、従来の紙の書類による決裁を電子化するよう、「デジタル・ガバメント閣僚会議」と呼ばれる閣僚会議において、政府が策定した方針のことです。この方針では、電子決裁に移行することでかえって業務が複雑・非効率的になるものや、災害時などの緊急案件を除いて、電子化できるものは速やかに電子決裁へ移行するよう定められています。

行政機関において、いち早く電子決裁を取り入れたのが、茨城県庁です。茨城県庁では、文書の改ざん防止や業務効率化のため、2018年4月から電子決裁100%を目標とする取り組みを実施しました。結果、同年7月には決裁業務のほぼすべて(99.1%)の電子化に成功しています。また、ほかの行政機関でも電子化の動きが広まっており、さらに民間企業でも電子決裁の導入が進められています。

参照元:【茨城県】電子決裁率ほぼ100%を4ヶ月で達成

行政機関や官庁で電子化が進んでいくと、当局への提出物などを電子化するハードルが下がるため、民間企業での電子化が進んでいくと考えられます。競争力に差がつく前に、民間企業にもより早い電子化が求められそうです。

紙文書での決裁と電子決裁の違い

では、紙文書での決済と電子決裁には、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。ここで、それぞれのフローを比較してみましょう。

ステップ 紙の決裁 電子決裁
申請書の作成 作成した申請書を印刷し、押印(申請書を手書きで作成する場合もある) オンライン上の申請フォームに必要事項を入力
上長へ回付 押印した申請書を上司のところに持っていく(郵送の場合もある) 申請者が申請ボタンを押すと自動で回付され、上長に通知される
上長承認 受け取った申請書に押印 承認ボタンを押す
役員へ回付 押印した申請書を役員のところに持っていく(郵送の場合もある) 自動で回付され、役員に通知される
役員承認 受け取った申請書に押印 承認ボタンを押す
社長へ回付 押印した申請書を社長のところに持っていく(郵送の場合もある) 自動で回付され、社長に通知される
社長決裁 受け取った申請書に押印 決裁ボタンを押す
申請者への通知 担当者が申請者へメールを送る 自動通知
書類の保管 ファイリングして保管 オンライン上のデータベースで自動保管

電子決裁では、印鑑による決裁印や書類の手渡しが不要であることがわかります。回付されたデータは決裁後にデータベースに自動で保管されるため、書類の保管作業は無くなります。検索機能で膨大なデータの中から該当の書類を探すことも簡単に行えます。また、オンライン上で承認フローを進められるため、物理的な距離も関係ありません。たとえ上司や社長が出張中でも、移動時間などに承認でき、決裁にかかる時間を短縮できます。業務をより効率的に進めるためには、電子決裁への移行が必要なのです。

電子決裁の種類

電子決裁には、大きく分けてクラウド型とオンプレ型という種類があります。ここでは、それぞれの違いを説明します。

オンプレミス型

オンプレミス型は「オンプレ型」とも呼ばれ、社内にサーバーや通信回線、システムを構築して利用する形態を指します。基本的に自社で運用するため、自社の風土や文化、利用目的に応じ、機能をきめ細かくカスタマイズできる自由度の高さが魅力のひとつです。
社内のパソコンで利用することが前提のため、社外からアクセスする場合には別途設定が必要となります。また、導入にあたっては自社でサーバーを調達する必要があるため初期費用がかかること、サーバーおよびクライアント用のソフトウェアを自社で運用管理し続ける作業負荷が大きいことなどがデメリットとして挙げられます。

クラウド型

クラウド型は、オンライン上のサーバーで提供されているシステムや、インターネットを介してサービスを利用する形態を指します。
クラウド型の製品は多くがサブスクリプション(月額制)の利用形態であり、アカウント登録が完了すればすぐに利用開始できます。オンプレ型と異なり、サーバーなどインフラを自社で調達する必要がないため初期費用が安く、サービスのアップデートやメンテナンスも自動でおこなわれるため自社で運用する手間がかかりません。機能に制限がありますが、無料で使えるシステムも存在します。
また、インターネットに接続できる環境があれば社外でも利用できるため、時間や場所を選ばない電子決裁と親和性が高いのも特徴です。近年急速に進んだテレワークの普及も影響し、現在はクラウド型が主流となっています。

電子決裁のメリット

電子決裁を導入すると、さまざまなメリットがあります。ここでは、なかでも代表的な3つのメリットについてご紹介します。

ペーパーレス化の実現

電子化による大きなメリットのひとつは、ペーパーレス化の実現です。ペーパーレス化が実現すると、コスト削減や作業効率の向上などが見込めます。コストに関していえば、紙代や印刷代などがカットできるでしょう。さらに電子化が進めば、書類を保管するためのスペースも不要となるため、オフィスの縮小も望めます。

さらにペーパーレス化によって、過去の書類も探しやすくなります。書類管理の手間が減るので、ほかの業務に時間を費やせるでしょう。

また、申請や承認を時間・場所問わずおこなえるのも、大きなメリットです。パソコンやスマートフォンさえあれば、出張が多い上司でも移動中に申請書を確認できます。テレワークを実施する際にも、決裁のために出社する必要がなくなります。

記入ミス・不正防止

紙の書類による決裁の場合、ミスや不備があると、修正するのに時間がかかり、承認を得るのが遅くなってしまいます。しかし電子決裁の場合は、システム上で決められた手順、項目に沿って決裁をあげられるため、そもそも記入ミスをしないよう防止できます。また、万一記入ミスがあったとしても、電子決裁ならすぐに修正が可能です。
加えて、オンライン上で処理をおこなうと、その記録が残ります。結果、不正防止や改ざん防止につながります。閲覧に制限をかけることもできるため、コンプライアンスの向上になるでしょう。

内部統制の強化

電子決裁のメリットとしては、内部統制の強化も挙げられます。電子決裁を導入する際は、決裁ルールを明確にする必要があります。特に社内で共通の決済手順や入力項目を定めて運用する場合、細かく決裁書類の内容やルールを定めなければなりません。その結果、社員が守るべきルールが明確になり、内部統制の強化につながります。
さらに、電子決裁なら決裁書類を探すのが容易なため、内部監査や外部監査の際の書類提出もスムーズです

電子決裁システムの選び方

電子決裁システムの導入にあたり、どのような基準でシステム選定を進めるべきかお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここではシステムの選び方について、大きく3つの観点に分けて解説します。

承認ルート設定の自由度

当然ながら、決裁におけるフローは企業によってさまざまです。同じ企業内でも、承認フローやルートは業務によって異なります。複数部門にまたがる承認や、合議、入力された項目の数値によって承認ルートを使い分けるなどの条件分岐をはじめ、複雑なフローでも柔軟な設定ができるかどうかが非常に重要なポイントとなります。
また、一定の金額以上であれば承認者を追加する、特定の分類に該当する申請は承認者を変更するなど、流動的な承認ルートにも対応できるかどうかもあわせてチェックしておくとよいでしょう。

操作性・利便性

せっかく電子決裁システムを導入しても、利用者にとって使いにくければ活用は進みません。IT部門の担当者だけでなく、現場の社員も直感的に操作できるシステムを選びましょう。専門知識を持たない担当者でも簡単にワークフローを構築できるよう、ノーコード・ローコードで使える仕組みであることも重要です。
また、企業規模の変化や組織変更に伴い、業務プロセスや申請書類は変化するものです。人事異動により承認者が変わる場合もあります。複雑なフローをデジタル化できたとしても、変化にすばやく対応することができなければ、逆に業務効率を下げてしまいかねません。メンテナンスが容易にできるかどうかは、システムを使い続けるうえで重視すべき要素のひとつと言えるでしょう。

利便性の面では、サポートが充実しているかどうかも重要です。システムを使うなかで困ったことがあった際、限られた時間のなか自力で解決するのは大変です。必要なときにサポートを依頼できる体制があるか、QAや他社事例など自社での活用のヒントになるコンテンツが充実しているかどうか、なども参考にしてみてください。

機能の充実度

その他、機能がどの程度充実しているかによって、システムの活用度合いに差が出てきます。下記のポイントをはじめ、どのような機能があるかを確認しておきましょう。

  • テンプレートなどが充実しているか
    申請フォームをゼロから作るには時間がかかるため、最低限の設定のみで利用開始できる機能があると便利です。
  • モバイル利用にも対応しているか
    パソコンだけでなくモバイル利用ができれば、出張先や移動の合間でも承認ができ、決裁スピードが上がります。
  • ほかのシステムと連携ができるか
    必要に応じ社内で利用しているほかのシステムと連携することで、業務全体の効率化を狙えます。
  • 権限制御を細かに設定することができるか
    決裁の内容によっては、センシティブな情報が含まれる場合もあります。閲覧や編集の権限を組織や役職に応じて柔軟に設定することで適切な情報管理ができ、安全な運用につながります。

どんなに高機能でも、自社の要件に合わないようでは仕方がありません。自社の要件を理解したうえで、実現したいことにフィットした機能がそろっているかを確認しましょう。

電子決裁の成功事例

上記のとおり、電子決裁にはさまざまなメリットがあり、企業の業務効率をアップしてくれます。一方で、自社の申請フローが複雑で、電子決裁になかなか移行できないとお悩みの方もいらっしゃるでしょう。しかし「SmartDB®」なら、複雑なフローにも対応して、きちんとシステム化できます。そのため、多くの大企業が「SmartDB」で電子決裁の導入に成功しています。ここでは、その一例を紹介します。
※以下、敬称などを省く

日本特殊陶業株式会社

日本特殊陶業株式会社は、電子決裁の導入によって、たった3ヵ月で20もの申請業務のデジタル化を達成しました。同社では、IT活用による業務効率化を目指しており、人事部門が中心となって、決裁処理の電子化を進めていました。そのなかで「SmartDB」を選んだ理由としては、「運用開始後にも自社で設計をおこなえること」「使いやすさ」「セキュリティの高さ」を挙げています。特に、法改正や規定改定などにより、決裁ルールの変更が多発することから、柔軟に対応できるシステムを探していたそうです。電子決裁の導入の結果、ミスは30%減り、申請スピードは2倍になったという結果が出ています。

参考事例
日本特殊陶業株式会社

現場主導で取り組み、わずか3ヵ月で20業務をデジタル化!

世界トッブシェアを誇る、総合セラミックスメーカーの日本特殊陶業。多忙を極める人事部門の若手担当者2名がたった3ヵ月で20の申請業務をデジタル化した。喫緊の課題であった紙文化からいかにして短期間で脱却できたのか…!?

株式会社アダストリア

株式会社アダストリアでは、電子決裁により、意思決定にかかる時間を3倍早めることができたそうです。もともと同社では、急速に会社が成長している一方で、申請に手間がかかるという課題を抱えており、電子決裁の導入を検討していたそうです。「SmartDB」導入の決め手としては、「標準機能を組み合わせるだけで、複雑なフローを組み立てられること」「システム開発の経験が少なくても、システムの変更や拡張ができること」を挙げています。現在では、当初の対象以外の業務でも電子化が進み、全社規模で電子決裁を利用しているそうです。

参考事例
株式会社アダストリア

1,400店舗からの業務申請を「SmartDB」でデジタル化

商品企画から生産、小売までを手掛ける「SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)ブランド」にこだわり、グローバルで約1,400店舗を展開している。継続的に成長を続けるアダストリアにおけるデジタル化の課題とは。

ヨネックス株式会社

決裁処理を電子化して、ワークフローの工数を3割削減したのが、ヨネックス株式会社です。同社では、組織が大きくなるにつれて複雑化したワークフローに悩まされていました。もともと紙と電子を併用していたものの、2018年に本格的な見直しをおこない、「SmartDB」の導入を決定したそうです。選定の理由としては、「業務部門が自律的にデジタル化できるから」という理由を挙げています。導入の結果、ワークフローの工数が3割減ったそうで、これを人件費に換算すると、およそ1年で数百万円となります。今後も、自ら業務改善したいという社員とともに、業務改善や全社への拡大に取り組むとしています。

参考事例
株式会社ヨネックス

複雑なワークフローを、現場主導のデジタライゼーションによって工数3割削減

複雑なワークフローをデジタル化していくことによって、大幅な工数やコストの削減に成功しているが、ヨネックスではそれだけにとどまらない、さらなる効果が生まれているという。現場主導によるデジタライゼーションの真の価値とは。

まとめ

業務の効率化を図りたいなら、電子決裁はぜひとも導入したいシステムです。なかでも「SmartDB」は、大手企業での導入実績があり、具体的な効果も出ています。電子決裁の導入についてお悩みなら、ぜひ「SmartDB」を導入してみてはいかがでしょうか。

関連資料
ワークフローシステムの必要性と全社利用に必要な機能

ワークフローシステムの必要性と全社利用に必要な機能

「SmartDB」のワークフロー機能についてご紹介します。多くの大企業ではすでにワークフローシステムを導入しているのに、なぜ紙やExcelの業務がなくならないのか?大企業がワークフロー導入時に確認すべきポイントなどを公開しています。